2022年3月6日日曜日

全国水平社創立100周年、『橋のない川』に寄せて



 3月になりずいぶん暖かい日もあります。八重のクリスマスローズが咲き始めました。福寿草も葉を伸ばしてきましたね。

 全国水平社は1922年(大正11年)3月3日に京都市で創立大会が開かれました。その時に採択された水平社宣言は「日本で初めての人権宣言」と言われています。それから100年が経ちました。触れる者の胸を熱くする「人に世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれた水平社宣言は、残念なことですが今もなおその途半ばであると思わずにはいられません。

 私の生まれ育った所は、近くに被差別部落、沖縄出身者のコミュニティや在日朝鮮人の多く住む地域があり、人権教育に熱心に取り組んでいました。学校で学ぶこと、おぼろげに知る同級生の境遇、父や祖母の持つ差別意識。周囲の価値観の違いを見つつ、自身の人権感覚を育てていったと思います。

 家で定期購読していた『暮しの手帖』誌に、住井すゑさんが「牛久沼のほとり」という題で随筆を連載しておられました。それを読んでいたのがきっかけだったのか、『橋のない川』を読み始めたのは中学生の時でした。全国水平社創立を時代背景として、奈良県の被差別部落で生まれ育った誠太郎・孝二とその家族を描いた小説に引き込まれ、夢中で読み進めました。

 二人が全国水平社創立に関わっていくあたりは読みながら胸の高鳴りが抑えられなかったのを思い出します。私は『橋のない川』を読んで、学校で学んだ人権教育をしっかりと根付かせることができたと思います。

 「もし入院することになったら読みたい本」がいくつもあるのですが、『橋のない川』もそのうちの一つです。ただ、昔の文庫本は字が小さく、今の私には読みにくいのが難点です。新しい版は字が少しは大きいでしょうか。買い直して持って行かねばならないかもしれません。

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